大司教



職人大国エレミアには職能ギルドが数多く乱立している事から、必然的に鍛冶の神ブラキ信者が多い。
そんな中で、大地母神の大司教が勢力を伸ばしつつある。
類稀なる美貌が、若きエレミア国王の目に留まり、一時は強く求婚された事もあったという。
まだ20代半ばという年齢でありながら、その法力は既に大陸屈指とまで言われるその女性の名は、
ランカスター大司教の名で広く世に知られている。
白く肌理細やかな柔肌と、腰元まで伸びる輝かしい黒髪の美しさは、大地母神の生まれ変わりであると
囁く信者すら少なくない。
身分を隔てる事無く、誰に対しても優しく微笑みかける美貌に一目惚れした男性の数は、一説には
天文学的な数字にまで及ぶとすら言われる。
そんなランカスター大司教のもとに、一人のグラスランナーがひょっこり姿を現した。
油断の欠片も無い機敏な身のこなしと、数倍以上もの体格を誇る巨漢を一睨みで竦みあがらせる
強烈な眼光は、一見すると人間の子供に見える外観からは想像すら難しい。
頭に巻きつけたバンダナの端々から見え隠れする真っ白な髪が、多少の違和感を感じさせない事も
なかったが、ごく自然な活発な子供としての挙措が、風変わりな少年という印象を作り上げる事に
成功していると言って良い。
グラスランナーは、一通の手紙を持参して、エレミアの街西方に位置するマーファ神殿を訪れた。
その内容は、持参したグラスランナー本人も知らない。
ただ、彼の友人であり、盗賊ギルドに於いては双璧を成すと言われる人物からの、重要な依頼が
記されている事だけは知っていた。
シルクのような滑らかな指先の動きで手紙を紐解き、そこに綴られるぶっきらぼうな文字の一つ一つに
目を走らせる際の大司教の美貌には、懐かしさと人恋しさが入り混じったような表情が浮かぶ。
多くの男性がこの時の大司教のはにかんだ笑顔を目撃すれば、きっと手紙の差出人に対して少なからぬ
嫉妬の炎を燃やした事だろう。


「大司教」の キャラデータ

TRPGのTOP | 次へ
inserted by FC2 system