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一行の出発準備が整ったのは、日付も変わった深夜であった。
主人の居ない冒険者の店は、各人が寝泊りしている二階宿部屋以外は、そのほとんどが闇に閉ざされ、
どこか不気味な静寂が支配していた。
「わしとリグ坊が先導しようかの。夜目が利くドワーフと野外行動の達人が先を行く方が良かろうて」
ゴルデンの提案に、誰も異論は無かった。
本来こんな夜更けに山上の森林地帯を進むのは、よほど土地勘に明るい地元民でもなければ、相当な
困難が伴うであろうというのが通説であり、ほとんど例外は無いと言って良い。
しかるに、彼ら冒険者達には、時と場合によっては、その困難に対して果敢に挑まねばならない。
今がまさにその時であり、ここで御託を並べて出発を拒否しようとする者が居れば、その者は既に、
冒険者としての誇りを自ら放棄していると言うべきだろう。
「とにかく僕達は、少なくともキャロウェイおじさんから約一日の遅れというハンデを背負ってるし、
  急いで追いつくには、こういう危険も冒さなきゃね」
深夜であろうとも、いつもの明るい口ぶりで言い放ち、先陣を切って水鏡亭を飛び出していくリグの
後に続いて、残る五人がぞろぞろと暗い路上に足を踏み出してきた。
幸い、月光と星明りが程よく山の冷たい空気の中で澄み渡るような透明感を持って降り注いでいる為、
さほどに視界で困るという事はなかった。
尤も、樹々の生い茂る森の中では、そうそう楽にはゆかないだろうが。
一行は街の中心部を走る大通りを東へと抜け、キャロウェイやクリスタナ達が向かったという洞窟に
最も近いであろう東街門からアズバルチを出る道を選んだ。
六人もの集団が、こんな夜更けに街を出るという事態に、街門脇の詰め所に当直で泊り込んでいる
門衛達は驚きの表情を見せたものの、別に見咎める様子も無く、無事を祈って送り出してくれた。
「ランタンは、僕が用意しておきました」
「よし。じゃあルーシャオのランタンだけを光源にして、残りは警戒態勢のまま進行しよう」
ガルシアパーラがもっともらしく宣言するまでもなく、先頭をゴルデンとリグの妖精コンビが進み、
二列目に接近戦能力で劣るルーシャオを置いて彼のランタンを光源とし、しんがりを二人の戦士、
テオとガルシアパーラが受け持つ。
「さぁ、徹夜の強行軍だ。気合入れて行けよ!」
高らかに宣言したガルシアパーラ本人が、一番眠そうである。
大きな欠伸を漏らす彼に、他の五人は内心呆れ返っていた。

出発の少し前、テオは夜中に失礼だとは思いつつも、白峰亭に顔を出し、これから件の洞窟へ
向かう旨を告げ、且つ挨拶を済ませる為に、美人若女将メメルを訪ねていた。
メメルは、既に薄手の夜着に着替えを済ませており、見事なブリリアントブロンドを解き放ち、
腰元までの美麗な滝を夜風になびかせて応対に出てきた。
さすがにテオは申し訳無いとは思ったものの、メメル本人は迷惑がるような素振りを見せなかった。
「いよいよ行くのね。街の外には、半日ほど距離が離れると、妖魔の類が出没するようになるから、
  くれぐれも気をつけてね」
「あ、はい、どうも・・・ありがとうございます」
美貌の婦人との会話の経験は、どちらかと言えば乏しい方のテオは、言葉少なにそう答えるのが
精一杯だったが、メメルはさすがに冒険者の店を経営しているだけの事はあり、アズバルチ周辺の
魔物棲息事情に関しては、実に詳しかった。
これからテオ達が向かう洞窟は街から見てほぼ真東に位置するのだが、イストンへと続く街道とは
大きく逸れている事もあり、どんなに大きくてもせいぜい馬車道が走っている程度の山中を進む。
同方向の村や集落へ行く以外には、ほとんど人通りの無いルートであると言えよう。
時折、先頭を行くリグが足を止めて、下生えと土砂が交差する地面を凝視し、新しい足跡について
大雑把な分析を試みていた。
「最近通った足跡は、ざっと十人弱ってところかな・・・大体人数は合ってると思う」
更に曰く、他に足跡は見られないところを見ると、少なくとも、クリスタナ達を追っていったのは、
キャロウェイと、例の怪しげな冒険者グループ以外には居なさそうであるとの事だった。
「どこで追いつくか分からんな。誰に追いつくかも問題だが」
順番から言えば、蒼の朝霞亭から出発したという元野盗団上がりの冒険者グループと遭遇する
確率が一番高いと思われるのだが、もしかすると、キャロウェイに追いつく可能性もある。
いずれに出会おうとも、冷静な対応が要求される為、特に先頭を行くゴルデンとリグにかかる責任は、
決して小さなものではない。
ところが、彼らが最初に遭遇したものは、そのいずれでもなかった。
馬車道が北上した為、樹間の道無き道を進まざるを得なくなった一行は、獣道とも言えぬような、
足場の悪い森の中を進まなくてはならなくなった。
散乱する岩石や、地面からうねるように飛び出している大樹の根を避けるようにして進む彼らの前に、
黒い集団がその気配をあらわしたのである。

メメルの忠告は、実に精確だった。
丁度一行がアズバルチを出て五時間程度が経過し、東の峰の向こう側が、うっすらと紫色に染まって、
夜の支配がもう間も無く終わりを告げようとしていた頃合になって、最初の殺気が出現したのである。
旅人が一日の間に、移動に費やす時間は、単純計算で約八時間から十時間程度。
これが旅程で言うところの『一日』に該当する。
そして『半日』と表現すれば、およそ四時間から五時間程度を指すのだが、まさしくその『半日』分の
距離を進んだ時点で、招かれざる客が前方に立ち塞がったのだ。
「ゴブリンじゃな」
既にゴルデンは、背負っていた愛用の高品質両手斧を、丸太の幹のように太い豪腕に持ち替えており、
臨戦態勢に入っている。
「数は?」
「少ないとは言えんぞぅ」
フォールスとゴルデンが交わす短いやりとりの間にも、黒い影の集団は左右に展開し、扇状の包囲を
もって制圧しにかかろうとしているのが分かった。
テオとガルシアパーラが、それぞれの得物を携えて前に出た。
ガルシアパーラの武器はごくオーソドックスな長剣なのだが、テオの武器は一風変わっている。
自身の背丈ほどもある、木製の六角棍を主武器としているのだった。
間合いの広さでは有利ではあるが、決定的な殺傷力に欠けるというデメリットも否めない。
しかしながら、習熟度如何によっては、並みの長剣をも凌ぐ破壊力を備える事がある為、その性能を
一様に否定する事も出来ない。
だが矢張り棍術、或いは棒術といった類の戦闘技術は、敵を打ち倒す為の技術というよりも、むしろ
防御的と言うべきであり、街の門衛や衛兵などが狼藉者を取り押さえる為の非殺装備としての色合いが
極めて強いのも事実である。
本当に敵を打ち倒す為に用意するのであれば、総金属製の六角棍を用意するか、或いは少なくとも、
芯部に重金属棒を差し込んで殺傷能力を高める必要がある。
が、今テオが所持している六角棍は、単純に材木から削り出しただけの代物に過ぎず、斧や両手剣と
いった重量を乗せて攻撃を仕掛けてくる武器をまともに受け止めれば、真っ二つに叩き割られてしまう
公算が非常に強いと言って良い。
テオにとって幸いだったのは、今、闇の中を迫りくる影の集団には、そういった厄介な武装は、一つも
見受けられない事であった。

ゴブリンは、フォーセリア世界においては最も普遍的に見られる妖魔の一種である。
人間の子供よりもやや高い程度の身長は、痩せっぽちの場合もあれば、妙にずんぐりと太っていて、
意外な程に筋肉に覆われている場合もある。
一致しているのは、紫がかった赤褐色を基本色とする不気味な肌の色を持ち、闇の中でよく光る
殺気ばった瞳と、悪意に満ちた醜く歪んだ容貌に加え、薄汚れた衣服と、粗末な武装で身を固め、
人間や妖精族への攻撃的な意思を持って行動しているという事である。
ほとんどが臆病で自分勝手な性格であると分析されているのだが、部族単位で行動している場合は
その逆で、恐ろしい程の勇猛さと凶暴さを見せる事も少なくない。
この場合は主に、君主クラスかシャーマンクラスのゴブリンが統率権を握っている事が多く、配下の
ゴブリン達は執拗なまでに苛烈な攻撃を仕掛けてくるという。
さて、今冒険者一行の前に現れたゴブリン集団は、頭目を頂く部族であるのかどうか。
「連中は陽光を嫌います。せめて夜明けまで持ちこたえれば、チャンスはあるでしょう」
「ならば持久戦だな。俺もお前も、やたらめったら術を使うのは控えた方が良いだろう」
実際、ルーシャオにしてもフォールスにしても、徹夜で山の斜面を覆う森の中を強行軍で歩いてきた
影響の為、下手に精神力を使い果たすと、その場で昏倒したまま、次の夜まで眠り込んでしまう
危険性をはらんでいた。
他の四人も、疲労はピークに至りつつある。
果たして、朝陽が差し込む時間帯まで、ゴブリンの集団を捌き切れるかどうか。
不意に、どこかで甲高い雄叫びのような響きが樹間にこだました。
それを合図として待っていたのか、ゴブリンどもが一斉に粗末な小剣や短剣を振りかざし、前方や
左右から殺到し始めた。
呼応して、テオ、リグ、ゴルデン、フォールス、ガルシアパーラの五人が迎撃態勢に入った。
「守りを固めるんだ!俺の命令に従って陣形を敷けば負ける筈がない!」
ガルシアパーラの必死の叫びを、しかしフォールスは長剣を振るいつつ、あっさりと否定した。
「いや、一箇所には留まるな。包囲されたらどうにもならんぞ」
この場合、フォールスの方が正しい。
折角リーダーシップを発揮して自分を認めさせようと目論んだガルシアパーラだが、その意図は
呆気なく出鼻を挫かれてしまった。

ゴブリン集団の包囲から免れるべく、東へ向けて突破を試みる一行は、優秀な身体能力を誇る
テオが錐の先端としての役割を担って、自ら六角棍を振るいながら、押し寄せるゴブリンの波に
突撃してゆく。
絶対的な殺傷力には欠ける六角棍ではあったが、その間合いの広さと武器そのものの軽量さから、
突撃戦には実に有効であった。
テオのすぐ後ろに、ランタンを掲げたルーシャオが続く。
ゴルデンやリグとは異なり、夜目も利かなければ野外行動に長けている訳でもないテオを、照明で
援護する必要があった。
「それにしても、なんて数の多さなんだよ!」
リグが毒づくのも無理は無い。
既にゴルデンが言ったように、部族単位で待ち構えていたのかと思われる程の数が、彼ら一行に
次々と襲いかかってくるのである。
決して冒険慣れしているとは言い難い彼ら六人にとっては、この猛攻は大いに堪えた。
ものの十分もしないうちに、全員が大小のかすり傷や刺し傷を、全身のあちこちに作っている。
直撃による負傷は免れているものの、こうした細かい傷の積み重ねが、思わぬ疲労を招くのである。
「な、なかなかつらいですねぇ・・・!」
基本的な体力は人並みにあるものの、こういう戦闘におけるスタミナにはあまり自信の無い方の
ルーシャオは、早くも息が切れかかっている。
しかし、東の空が陽光で白く染まるには、まだまだ時間がかかりそうであった。
「おい!あれを見てみぃ!」
手近のゴブリンを両手斧で追い散らしつつ、ゴルデンが遥か前方、即ち今の位置よりも更に東の
方向に、一際明るい光が灯っているのが見えた。
恐らく焚き火であろう。
そしてその焚き火の周囲でも、数名の人影が、同様にゴブリンの群れと争っている様子が見えた。
どうやら、このゴブリン集団は他にも襲撃している対象を抱えていたらしい。
「敵の敵は味方、か。ひとまず合流してみるか」
焚き火の主達が何者であるのか、大方のところは察しがついているのだが、状況が状況である。
フォールスは、選り好みして自滅するのは愚の骨頂と考えていた。

果たして、彼ら冒険者一行は焚き火との距離を詰めて、ゴブリン集団と格闘に苦戦している様子の
別の一団と、お互いの表情がはっきりと分かる程度にまで近づいた。
人影の数は全部で四つ。
いずれも、ゴルデンには見覚えのある顔ぶれであった。
蒼の朝霞亭の一階酒場は、昼夜を問わず、薄暗く陰湿な雰囲気に包まれていたのだが、その中でも、
一際異彩を放っている一団があった。
不自然な程に精力に満ち、やたらと威勢の良い四人の冒険者風の男達。
その同じ顔ぶれが、今この焚き火の周囲で、ゴブリンども相手に防戦を強いられているのである。
「ようご同輩諸君。助けは必要かね?」
「ふざけんな!余裕こいている暇があったら、さっさと助けろ!・・・それにしても、こいつらぁ、
  一体何なんだ!?」
「ま、見たところゴブリンどものようじゃがのぅ」
四人のうちで、リーダー格と思われる30代前半ぐらいの、妙に目つきが悪い人間男性と以上の
ようなやり取りを交わした後、ゴルデンはテオとルーシャオを追い抜いて先頭に飛び出し、焚き火の
際へと位置を移した。
この直後、形勢が激変した。
冒険者総勢十名が、焚き火脇で布陣を展開し、ゴブリンの猛攻に耐え凌いだばかりか、逆転して、
攻めに転じ始めたのである。
「これなら、朝を待つまでも無いかな」
手ごたえを感じたテオにも、若干余裕が出てきたのか、六角棍を操る棒捌きにも、それまでの
荒っぽい突き主体の攻撃スタイルから、どこか滑らかさを思わせる円運動へと変化していった。
再び、獣の咆哮の如き響きが、樹間にこだました。
するとどうであろう。
それまで恐ろしい程に執拗な攻撃を見せていたゴブリンの大集団が、さっと潮が引いていくような
鮮やかさで、一斉に後退し、明け方の闇に包まれる森の向こうへと消えていったのである。
今の今まで激闘が繰り広げられていた同じ場所とは思えない程に、焚き火の周囲は静寂に支配された。
まだ一同は多少息が荒いものの、ようやく落ち着きを取り戻す事が出来つつあった。

「礼は言わねぇぞ。協力して助かったのは、お前達も同じなんだからな」
そのリーダー格の男(後に、モイセス・エタンセランと名乗った31歳の冒険者)は、不機嫌さを
露骨にあらわして、吐き捨てるように言った。
モイセスの態度に激昂したのが、ガルシアパーラであった。
「おい、ふざけるなよ!俺達は朝まで持ち堪えれば何とでもなったんだからな!それにひきかえ、
  お前達はただ一方的に助けられただけなんだという事を、よぅく理解するが良い!」
剣幕を立てて突っかかるガルシアパーラを無理矢理押さえ込んだのは、意外にもモイセス側ではなく、
テオ、ルーシャオ、フォールス、リグの四人であった。
こういうところで要らぬトラブルを引き起こすあたりが、ガルシアパーラの三流たる所以であった。
「まぁこの若造の台詞は無視してくれぃ」
赤ら顔で豪快に笑うゴルデンだったが、モイセスの不機嫌な表情が緩む事はなかった。
どうやらモイセス達一行は、ここで野営を張っていたらしいのだが、明け方になってゴブリンの
大集団による包囲攻撃を受け、そこにゴルデン達が加勢に現れた、というところらしい。
単純な肉体状況だけを鑑みれば、徹夜で強行軍を演じてきたゴルデン達とは対照的に、モイセス達は
ほぼ一晩じっくり体を休めている分、疲労の蓄積度には雲泥の差がある。
モイセス達にしてみれば、意図不明のゴルデン達とこれ以上接触する危険性を避け、さっさと朝食を
済ませて出発してしまえば、睡魔と疲労がピークに達しているゴルデン達を完全に振り切り、彼らの
追跡をかわす事が可能だろう。
しかしながら、モイセス達はゴルデン達の目的が分からない(少なくとも現時点では)。
「無粋な事を聞くが、あんた方も、例の遺跡の財宝狙いかいな?」
黙々と朝食の準備を進めるモイセス達に、半ばカマをかける狙いでゴルデンが聞いてみた。
テオ達は、未だに不満顔のガルシアパーラを力任せに押さえ込みながら、ゴルデンとモイセス間に
交わされる会話に聞き耳を立てている。
「いずれ分かる事だろうから教えてやる。まさしく、その通りだ。俺達は一山当てて、日銭暮らしを
  何が何でも終わらせてやるのさ」
「ほほぅ、やっぱり考えるこたぁ、皆一緒じゃのう。尤も、それこそが冒険者の本懐じゃろうがな」
笑いながら、しかしゴルデンは、モイセスの言葉に嘘っぽい響きを感じていた。
そこで更にゴルデンは別のカマをかけてみる事にした。
「実は他にも、同じ遺跡の財宝を狙う組が先行してるんじゃが、知っとったかいな?」

モイセスは、どうやらしたたかな策士らしい。
不機嫌な表情を見せてはいるが、その爬虫類の如きのっぺりとした面の下には、何か別の思案が
働いているらしく、意外な回答を口にしてきた。
「知っているともさ。クリスタナ・ソルドバスを筆頭とするお嬢様連中だろう?」
クリスタナ達の事を知っている、とモイセスは敢えて応じた。
下手に隠し事をすれば表情に出てしまい、逆に相手に主導権を握られてしまうものなのだが、むしろ
知っている情報を素直に述べる事で、自分の立場を危うくさせないという知恵があるらしい。
更にモイセスは、一応自分達は遺跡の財宝が目当てであると宣言する事で、本当の目的が何なのかを
ぼやかせている。
もしかしたら、モイセスが言うように、単純な遺跡探索こそが唯一の目的なのかも知れない。
ゴルデンに、その疑念を抱かせた時点で、モイセスの弁術は既に功を奏していると言って良い。
「クリスタナ・ソルドバスと言えば、ソルドバス家の令嬢だが、それも知っているのか?」
不意にフォールスが横槍を入れてきた。
ここで僅かにでも狼狽する様子が見れればしめたものだったが、しかしモイセスは矢張り冷静だった。
彼は小さく肩をすくめ、愚問するなと言わんばかりの表情で薄く笑った。
「危ないところを助けて、ソルドバス家から謝礼をたんまりふんだくるか?」
フォールスは、モイセスの嘲笑を含んだその言葉に、沈黙せざるを得ない。
クリスタナ達を誘拐し、保護という名目で身柄を拘束して、彼女達を危険から守ったと言い張れば、
形式上は身代金ではなく、謝礼金という形を取らせる事も出来るのである。
どうやらこのモイセス、ただの野盗団あがりの小物と思って対処すれば、手痛いしっぺ返しを食う
羽目になるかも知れない。
やがて、東の空とグロザムル山脈の稜線の境に、銀色の陽光が強烈に射し込んできた。
夜が明けたのである。
朝食の準備を終えたモイセス達は、意外なほどゆったりと余裕を持って腹を満たし始めた。
そう言えば、ゴルデン達も徹夜の強行軍中、多少休憩を取った程度で、睡眠も食事も足りていない。
このままモイセス達と同じようなペースで遺跡への道程を取ったとしても、落伍者が出ないとは
言い切れない。
恐らく、真っ先に脱落するのはガルシアパーラであったろうが。


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