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イーサン・モデイン、と呼ばれるその戦士は、長身と、端正な顔立ちが特徴的な人物ではあったが、
しかし矢張り、怪仏の霊的支配下にある事が強くうかがえる証拠に、その表情は能面のように無感情で、
且つ異様な程までに色白で、ともすれば青白くすら感じられた。
それでいて、全身から放たれる殺気と言うか、戦いのオーラはレイ・クラウザーをも圧倒する程に、
極めて強烈であった。
脂汗がこめかみの辺りから滴り落ちるレイ・クラウザーの美貌には、笑みこそ浮かんではいるものの、
実際は余裕など微塵も無かったであろう。
「見た覚えのある顔だね・・・元ファンドリア東部方面軍総長レイ・クラウザー殿と見知りおく」
魔戦士イーサンは、青白い光芒を放つ大振りの両手剣を無造作に垂らしたまま、どこか無気力な声音で
意外な程はっきりとした声を響かせた。
ルーシャオとゴルデンは、不死の眷属の大半は、知性の欠片も無いような化け物ばかりであるという
先入観があった為か、イーサンの静かな語り口調に、半ば驚き、半ば恐怖を覚えた。
知性があるという事は即ち、効率的な戦術を身に着けている可能性が高い、という事なのである。
「捨てた過去なんざもう忘れちまったなぁ。それよりあんたはどうなんだ?死して尚、過去に何か
  縛りがあるのか?」
「僕は・・・」
この時、ほんの僅かにではあったが、イーサンの陶器のように真っ白な面に、苦笑とも自嘲の笑みとも
取れる笑みの形が、その唇の端に浮かんだ。
ルーシャオは意を決した。
敵は恐ろしく手強そうな相手だが、もしかすると話が通じるかも知れない。
ならばタイミングを見つけて、こちらの立場や希望を何とか伝え、戦いを回避出来ないものか、と。
だが今は、イーサンとレイ・クラウザーのやり取りを、じっと黙って見つめている。
彼の本能が、まだその時がきていない、と告げているのだ。
「情けない話だけど、生者の全てが憎い。理性として、それは馬鹿げた事だって分かっているけど、
  これが怪仏の恐ろしい精神支配なんだね・・・情けない話さ。そしてそれ以上に、僕は自分自身が
  憎い・・・いや、許せないと表現する方が正しいかな」
イーサンの微笑はむしろ、彼が内包する深い絶望の念の裏返しでもあった。
死者となって怪仏の精神支配を受けて尚、生前の性格が色濃く残っている部分は、痛々しくもあった。
「あ、あの!」
不意に、ルーシャオが割ってはいるような格好で口を挟んできた。

ここが呼びかけるタイミングだ、とルーシャオは一瞬で判断した。
相手のイーサン・モデインはまだ、戦闘態勢には入り切ってはいない様子だった。
ならば、乱戦に突入してしまう前のこの瞬間こそ、ルーシャオの言葉を相手の耳に届けさせる唯一の
チャンスであると言って良い。
「無駄である事を承知でお聞きしたいのですが・・・リカルド・フレンツェンっていう人は、一体、
  何者なんでしょうか!?」
今更そんな事を聞いて何を・・・とゴルデンは内心歯がゆく思ったが、しかし表情には出さない。
正直なところ、ルーシャオの狙いがどこにあるか、いまいち読み切れなかったからであった。
しかし意外にも、イーサンは驚くほどの柔和な表情でルーシャオに面を向け、静かに応じ始めた。
「僕と同じ、怪仏の眷属さ。相違点は、生きたまま眷族になった事かな。僕やカッツェは残念ながら、
  死後に怪仏の支配を受けた。だからどうしても、怪仏の強力な精神支配から抜け出せないんだ」
「あの、それで、そのリカルド・フレンツェンとブジェンスカ本家が交わしたという契約書は、
  ここにあるんでしょうか!?」
全く大胆と言うべきか、怖いもの知らずと言うべきか。
ルーシャオは、相手がレイ・クラウザーをも尻込みさせる化け物であると認識しつつも、ちゃっかり
自分達の要求を突きつける事を忘れなかった。
そんなルーシャオの大胆さが、逆にイーサンの気持ちの切り替えを遅らせている。
「まさかそんな事を真正面から聞かれるとは思ってなかったなぁ・・・でも、別に隠したからと
  言って、僕が損をする訳でもないしね。その契約書なら、もう君達が持っているよ」
ルーシャオやゴルデンのみならず、レイ・クラウザーやエナンですら、目を丸くしてイーサンの発言に
耳を疑う始末であった。
再びイーサンは苦笑を漏らす。
「あぁ、もうちょっと正確に言うとね、君達が持ってる、あの化粧箱の中に隠しポケットがあってね、
  そこに挟み込んであるんだよ」
という事はつまり、ここでイーサン・モデインと対峙している事は全くの無意味だという事なのだが、
しかしそれこそ、フレンツェンの思惑でもあった。
彼らは体よく水鏡亭から誘い出され、この場で足止めを食っている事になるのである。
「ちょっとお喋りが過ぎたかな・・・フレンツェンは大嫌いだけど、同門のよしみで頼みを聞いて
  やらなくちゃあいけない。君達を、ここから帰す訳にはいかないんだよね」
いよいよ、イーサン・モデインが戦闘態勢に入った。
恐らく逃げようとしても、そうそう簡単には逃がしてくれないだろう。

いや、リグだけは例外だった。
この敏捷性に満ちた小柄なグラスランナーは、イーサンが両手剣を振りかぶるのとほとんど同時に、
廊下を駆けて一階方面へと走り出していたのである。
イーサン・モデインの話が事実とすれば、水鏡亭は極めて危険な状態にある事は明白で、この場に
とどまってもほとんど戦力的に意味を為さない自分は、一刻も早く水鏡亭に引き返すのがベストだと
考えての行動であった。
(間に合うかな・・・?)
正直なところ、これがリグの疑念であった。
今頃、水鏡亭にも刺客の影が迫っているかも知れない。
しかし、だからと言ってここブジェンスカ家別荘にとどまっている理由は全く見当たらない。
もしかすると、他の面々が水鏡亭の危機を察し、引き換えしているかも知れない。
実際そうなのだが、今のリグにとっては、それは半ば希望的観測に過ぎなかった。
だからこそこうして全力で駆け、不死の化け物どもが壁のように群がっている前庭を一気に突破し、
別荘の敷地外まで、奇跡的にほとんど無傷のまま転がり出る事が出来た。
グラスランナーという種は、その体躯から誤解を受けがちだが、スタミナは豊富な方である。
リグの場合もその例に漏れず、彼はほとんど休息無しで、アズバルチ街門へと辿り着く事が出来た。
しかし、リグが水鏡亭に到達する前に、既にミレーン、テオ、フォールスの三人は、一階酒場の
正面から突入を果たしていたのである。
明り取り窓から陽光が射し込んでいるにも関わらず、店内は奇妙な程に薄暗い。
そして何よりも、屋内全体に充満する負の精霊力のあまりの凄まじさに、フォールスは気分が悪く、
下手をすれば嘔吐する程の不快感を覚えていた。
「これは・・・相当手強い相手が潜んでいるようだな」
呻くようなフォールスの言葉は、しかしミレーンとテオの耳には届いていなかった。
不意に現れた気配。
その小さな影は、二階宿部屋へと登る木造階段の最上段に、ちょこんと腰を下ろして、こちらを
じっと凝視している。
どこか、愛くるしささえ感じるその幼い容貌は、くりっとした瞳と敏捷そうな体つきから、何となく
猫を連想させた。
イーサン同様、病的なまでに色白で、艶やかな黒髪が一層際立って黒く見えた。
「矢張りカッツェ・・・あなただったのですね」
ミレーンの呼びかけに呑んだのは、むしろテオとフォールスであった。

「ミレーンお姉ちゃん・・・助かったんだね。良かった」
まだ声変わりも終わっていない、少女のような澄んだ声音で、その人物カツェール・デュレクは、
おもむろに立ち上がり、一段ずつ階段を下りてきた。
既にミレーンはトンファーをそれぞれの両腕に構え、臨戦態勢に入っている。
カッツェは薄暗い店内で、どこか哀しそうな笑みを僅かに浮かべた。
「イーサンお兄ちゃんと猫は、駄目でした。見ての通り、怪仏の眷属に取り込まれちゃって・・・
  でも、ミレーンお姉ちゃんなら、きっと猫達の憎悪を破壊して、解放してくれると信じてます。
  だから、猫は決して手を抜いたりしません。ミレーンお姉ちゃん、お願いします」
半ば独白に近いカッツェの言葉に、ミレーンは聞き入る様子も見せず、ただじっと、相手の出方を
警戒し続けていた。
まだ十代前半にしか見えない少年のようなあどけなさを、カッツェは表情を消す事で、敢えて殺した。
敵対する筈のミレーンに、僅かな感傷をすら抱かせない為の措置だった。
「お二人は、二階へ。カッツェが上から降りてきたという事は、二階が危ないと思われます」
ミレーンを援護する腹積もりでいたテオとフォールスの両名だったが、指示に従わない訳にはいかない。
確かに彼女の言う通り、二階が危ないという事が十分に推測出来たからであった。
どういう訳か、カッツェはわざと半歩横にずれて、テオとフォールスが二階へ向かいやすいようにと、
便宜を図っているように思われた。
「行くぞ」
「あ・・・うん」
いささか呆然と、ミレーン対カッツェの展開に見入っていたテオだったが、フォールスに促され、
何故か心残りがあるような表情で、二階へ登る階段へと足を走らせた。
正直なところ、テオにはミレーンとカッツェの腕の程を、自分の目で見て確かめたかったという思いが
あったのだろう。
しかし今は状況が状況だけに、そんな悠長な事は許されない。
やむなくテオは、フォールスの後を追うような形で二階へ駆け上った。
フォールスはじっと神経を研ぎ澄まし、精霊感知によって、二階宿部屋の各室の状況を、感覚だけで
計測していた。
「一番奥だ・・・いくぞ」
ここはもう、腹をくくるしかない。
今度は接近戦に長けるテオが、愛用の両手棍を構えて、静かに、そして慎重に歩を進めてゆく。
二人は、負の精霊力が最も強い最奥の一室へと、足を運んだ。

フォールスの合図で、テオがその客室の扉を勢い良く蹴破り、その後にフォールスが続く。
見慣れない姿が、完全に不意を突かれた様子で、強張った表情のまま、そこに佇んでいた。
直感的に、フォールスはその人物がリカルド・フレンツェンである事を悟った。
テオとほぼ同等の長身で、聞き込んでいた通り、優男風の結構な美男子ではあったが、表情には
どこか陰湿な雰囲気が漂っているように思われる。
右腕には、例の化粧箱が抱え込まれていた。
そして左手には、鮮血で染まった小さな麻袋のようなものを携えている。
先手必勝とばかりに、テオは小さな気合の叫びを薄暗い空間の中に残して、一気に間合いを詰めた。
どうやら、フレンツェンは手負いの模様であった。
革鎧を着込んではいるものの、表面には真新しい無数の刃物傷が刻まれていた。
更に額や二の腕からは、決して少なくない鮮血が、ほとんど垂れ流しのように吹き出ている。
呼吸は大いに乱れており、体力が相当に消耗している事がうかがえた。
テオの性格として、手負いの相手を不意打ちで襲うには多少の抵抗が無くも無かったが、しかし、
ここは自分の感情よりも、全体の状況を優先させるだけの冷静さはあった。
完全に虚を突かれたフレンツェンは、テオの重い一撃で態勢を崩され、化粧箱を取り落とした。
更にフォールスが、頭痛を堪えて加勢に入ると、もうほとんど一方的な展開になるだろう。
ここでフレンツェンは、一瞬苦々しい表情を見せた後、ベッドの陰に向かって意味不明の言葉を
短く、そして鋭く吐き出した。
テオの棒術とフォールスの精霊法術で圧倒するかのように思われた局面は、ここでがらっと、
その様相を変化させた。
ベッドの陰から、二つの人影が、半ば跳ね上がるようにして立ち上がり、テオとフォールスの前に
立ちはだかったのである。
それは、信じられない光景であった。
「キャロウェイさん!?そ、それにクリスタナお嬢さんも・・・!?」
テオもフォールスも、キャロウェイとクリスタナの変わり果てた姿に、完全に言葉を失った。
だけではなく、その脇を一気にすり抜けてゆくフレンツェンへの対応のも、全く気が回らなかった。
キャロウェイとクリスタナは、いずれも死体であった。
胸部が深く抉り取られ、心臓がなくなっている。
「ちっ、もう少し時間があれば、こんな捨て駒みたいな使い方せずに済んだものを・・・」
恐らくフレンツェンのものと思しき声が、悔しそうな捨て台詞を残すのを、テオは意識のどこかで
ぼんやりと聞いていた。

心臓を奪われたキャロウェイとクリスタナの遺体は、その後、何をする訳でもなく、床にぐらりと
崩れるようにして倒れ込んだ。
それ以来、ぴくりとも動かない。
ショックのあまり、テオは完全に茫然自失状態であったが、フォールスはまだ多少の冷静さを残し、
フレンツェンが取り落としていった化粧箱に素早く近づいた。
その時、フォールスはベッドの陰でうずくまる姿に気づいた。
ガルシアパーラである。
全身をがたがたと震わせ、完全に怯えきっていた。
両手で頭を抱え込み、瞼を堅く閉じて、うわごとのような台詞を繰り返していた

「お・・・お願いです、その箱は差し上げますから・・・こ、ここ殺さないで・・・・」
この時フォールスは、これまでの生涯において、これほどの怒りを覚えた事はなかった。
キャロウェイとクリスタナの遺体は、全身に無数の傷があり、恐らくは死力を尽くして戦い抜き、
そして命を落としたのだろう。
のみならず、その死後に至っても、ほんの一瞬だけではあったが、フレンツェンに遺体を操作される、
という屈辱をも背負わされた。
対して、ガルシアパーラはどうか。
傷らしい傷は一つも無く、ただこうして、頭を抱えてへたり込み、震えているだけであった。
見苦しいまでの命乞いに加え、彼はキャロウェイとクリスタナが命を落としてまで守ろうとした
化粧箱を、あっさりと手渡した事までうかがえる。
こんな奴が、自分達の仲間だったとは。
そう思った瞬間、フォールスの中で何かが音を立てて切れた。
「貴様という奴は!」
フォールスは、ガルシアパーラの胸倉を掴んで引きずり起こし、自身の拳を痛める程の強烈な勢いで、
その顔面を殴りつけた。
ガルシアパーラは、もんどりうって板壁に叩きつけられた。
テオはその衝撃で我に返った。
が、キャロウェイとクリスタナの無残な姿を再びその瞳に焼き付けると、力無くしゃがみ込んだ。
今更ながら、ようやく気づいた。
フレンツェンが手にしていた血まみれの麻袋には、えぐり出された二つの心臓が入っていたのだ。
恐らくは、怪仏の秘術に用いようとしていたのだろう。

ブジェンスカ家別荘本家管理区分においても、一応の決着が見られた。
レイ・クラウザー、エナン、ルーシャオ、ゴルデンの四人は、それぞれがきっちり役割分担を決め、
お互いに補完しながら、総力戦を挑んだ。
が、結果は負けた。
相手がイーサン一人だけならば、結構良い勝負だったのだが、レイ・クラウザーを除く三人の
精神力がほとんど底を尽きたところで、敷地内の全ての不死の化け物どもが群がってきて、もはや
どうにもならない状況に陥ってしまったのである。
「なんか悔しいねぇ。総合力では良い勝負だったんだが、物量で負けちまったよ」
レイ・クラウザーは、しかし、意外にもあっけらかんとした陽気な表情で、素直に敗北を認めた。
矢張り場数を踏んでいる冒険者だけの事はあり、覚悟を決めるのも早い。
ここで、意外な事が起きた。
イーサンは両手剣を背負っていた鞘に収め、更に右腕を一閃させて、死者の群れどもに、退却する
指示を出したのである。
エナン、ルーシャオ、ゴルデンら三人は、怪訝な表情でお互いに顔を見合わせた。
「貸しにしておくよ・・・期待料込みでね」
言いながら、イーサンは踵を返す。
既にレイ・クラウザーも戦意を失っていたのか、愛用の魔装具デンジャラスビューティーを、腰に
吊るした鞘へと収めていた。
「何の期待だい?」
「・・・君達が、僕の憎悪をいつか破壊してくれるだろう、という期待だよ」
それはつまり、もっと技量を磨いて、自分を殺せ、と言っているのだろうか。
イーサン・モデインの真意は、この場の誰にも、よく分からない。
しかし少なくとも、この場ではもうこれ以上戦いは続かないという事だけは確かであった。
一時は、自分達の命が助かった事で喜びを分かち合った彼らであったが、水鏡亭に戻った時に、
恐ろしい結末が出迎えるであろうという事までは、さすがに予測出来なかった。
「とにかく、一旦戻るか」
エナンの声に、残る面々は勢い良く頷いた。
誰もが思っていた、そして希望していた事なのである。
とにかく今は、ゆっくり休みたい。そんな心境であったが、実際はそれもままならなかった。

リグが水鏡亭に到着すると、丁度ミレーンが疲れ切った表情で、一階酒場の扉を押し開けて、
出て行こうとするところであった。
一瞬怪訝に思ったリグだが、赤の他人の女性がこうして平和に店から出てきた以上は、少なくとも、
今この現時点においては、店内で戦闘行為は発生していない。
リグのその判断には間違いは無かったが、しかし衝撃的な結末がそこに待ち受けていた。
化粧箱も、そして例の契約書も、更にユニコーンの角も、全て守りきる事が出来た。
相手が相手だっただけに、この結果は良しとするべきであろう。
しかしその代わり、失ったものが大き過ぎた。
ブジェンスカ本家が暗殺者リカルド・フレンツェンを雇用したという事実を裏付ける契約書は、
ミレーンの手により、オリビエ・ディバースへと届けられ、更にオランへと引き返したオリビエが、
グラッフェンリード卿死亡事件と絡めて捜査を進めるという段にまで発展したという。
その結果、ブジェンスカ本家は最早、水鏡亭などに構っていられる場合ではなくなり、直接的な
脅威は全て去ったと考えて良い。
しかし、水鏡亭は当面、開店休業のような状態に追い込まれる格好となった。
更に言えば、アズバルチ市政においても、重大な混乱が生じ始めていた。
娘を失ったアズバルチ支配の当主ファジオーリ・ソルドバスが、失意のあまり、姿をくらませて
しまったのである。
加えて、アズバルチ経済の重鎮とも言うべきアスティーナが、クリスタナ死去の報を受けて以後、
完全に公の場から姿を消してしまった。
これからアズバルチは、政治・経済ともに、重大な局面に突入していく事となる。
ファリス神殿警察捜査官エナンは、事後処理を済ませると、早々にアズバルチを立ち去った。
今回の一件では、クリスタナを死なせてしまった責任を問われ、何らかの懲戒処分が下される
可能性が極めて高いという。
理不尽な話ではあったが、これが、ファリス神殿の定める厳格な規律なのだ。
そして、水鏡亭には、脱力感に覆われた冒険者達だけが残った。


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