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驚異の山脈グロザムルの南端を東西に分けると、東に聖王国アノスがその版図を広げ、至高神の教えを
近隣に伝播させる役割を担っている。
西側はと言えば、アレクラスト大陸屈指の大国オランの領土最南端に当たる沿海都市ブラードがある。
人口2万5千人と言えば、遥か西のテンチルドレンと呼ばれる十カ国の西部諸国の一国以上の人口に
相当する事になり、その規模は決して小さくないと思って良い。
港湾都市カゾフよりも更に南へ下り、気候は温暖で、非常に住み易い土地であろう。
但し、人々にとって住み易い土地柄であるという事は、裏返せば同様の生活環境を好む妖魔や魔物の類も、
周辺に多く棲みついていると考えるべきで、街の外に視点を転ずれば、その気候風景とは相反して、
決して安穏とは出来ない旅路を強いられる。
山岳小都市アズバルチから下山ルートを辿り、雲の上の街道に出て真っ直ぐ西へ向かえば、三日弱程度の
道程でここブラードに到着する。
独自の税制を敷き、オランやアノスと対等の立場で通商交易体制を取っている為、オラン領内の一都市で
ある割には、大国の地方都市というよりも、独立小国のような様相を呈している。
ブラードを治める役人も、トップである領主を除けば、その大半が地元民の任官登用制を採用しており、
地域密着型の行政が徹底されている点だけを見れば、アズバルチに近しいものがある。
地形に目を転ずれば、グロザムル山脈の峻険がそのまま海岸沿いにまでせり出すように迫っている。
丘や小山が、グロザムルの峰からの列を継承しているような格好で、その狭間に、ブラードの街並みが
すっぽり収まっているような外観を見せていた。
天然の要害としては、決して悪くはないであろう。
但し北と東を結ぶ雲の上の街道に限って言えば、道中の上下が激しく、至る所に急勾配の坂道が多く
配置されている為、旅人泣かせの土地でもあった。
日本風に想像してみるならば、山地が海岸線近くにまで凹凸を繰り返すように突き出している瀬戸内海の
沿岸を思い起こせば分かり易いかも知れない。
古代の水上都市と何かしらの関連が囁かれるカゾフとは異なり、ブラードは明らかに、新王国暦時代に
入ってから建造された都市である為、冒険者達の夢やロマンをくすぐるような噂話や奇聞などは、そうそう
耳に出来るものではない。
せいぜい旅の行商人や吟遊詩人などが、グロザムル山脈から持ち帰ったホラ話や、オラン発の怪しげな
伝聞を酒場で吹聴するのが関の山であろう。
しかし、前述した通り、周辺土地には気候柄、妖魔や魔物の類が多く出没する事から、防衛の観点から、
冒険者の力を欲するような局面などは少なくない方である。
その一方で、人口の多い街にはありがちな都市伝説なども、密かに囁かれているという。

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